銀色のサイダー。

しわっーす。

ケーキはほしくない。甘くて今は。

それよりも
サイダー飲みたいなあ。
シュワシュワしてて
あんまり甘くないやつ。

学校の帰り道
広い公園の丘の上で
サイダー飲んだの思い出したよ。
缶を口に近づけると
風の音がコハーって鳴る。

まだ付き合って間もなくて
初めてふたりで一緒に帰る
それだけでイベントみたいな午後。

ちょっと風の強い日だったんだ。
空はとても晴れていて。

そしてまた
缶を口に近づけると

風の音がコハーって鳴る。

飲み口の小さな穴で

風が巻き起こるみたいな感じ。

それを、うまく言えなかった。

これ、コハーって。

うんと、コハーって。

「？」って顔してたけど

幸い、笑ってくれていた。

んあぁあぁって
空見上げたらさ
銀色の丸い物体が飛んでる。

U.F.O？
本当？

今日って日は
いろんなことが起きるぜと思ったよ。

それはしばらく飛んでたけど
そんなことより
今、この娘と一緒にいるってことのほうが事件。

といえば
こぎれいかもしれないけど
ただ、
U.F.Oのこと切り出せなかっただけ。

彼女がお話ししてくれてたし。

「コハー」の挽回もないのに
「あ！ユーフォー！」は、ないよなと。

ぼくにとっては
女の子と一緒に学校帰るのと
未確認飛行物体を見るのは
どっちも初めての出来事だったんだ。

恥ずかしいやね。

ずっと忘れていたけど
サイダー飲みたいで思い出した。
あと、
マーシーの歌もアタマのなかで鳴ってたし。

長々と、どうでもいい話だったね。

それで君が偶然
サイダー買ってきてくれないかな。
外は寒いけど
公園にでも行こうよ。
どこに行っても
きっと楽しいと思うんだ。

いやいや
下の自動販売機で
ジンジャーエール買ってきます。
そういえば
仕事中だったもの。
大人だもの。だもの？

そうしよう。